[書評]【ミノタウロスの皿】もしもヒトと家畜の立場が逆だったなら[藤子・F・不二雄SF短編]

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ビジネス/書評

大人向けの「SF(すこし・ふしぎ)」

ブラックユーモアに脱帽

ひろ
ひろ

本当にすごい作品に出逢いました

藤子・F・不二雄先生をご存知でしょうか?

国民的アニメ「ドラえもん」や「パーマン」といった

数々のヒットを生み出した漫画家です。

藤子先生が描かれたSF短編という作品があるのをご存知でしょうか?

ご存知の方も少なくないとは思いますが、今回ご紹介させて頂きます。

最近「PERFECT版」なるものが発売されています。

ドラえもんを想起させるような絵柄から、救いのない話が描かれているので、

中々子供に見せるのは少し早いかなと思っていますw

とはいえ多くの気付きを得られる作品です。

今回はご存知の方もいらっしゃるでしょうが「ミノタウロスの皿」をご紹介します。

 

【ミノタウロスの皿】のあらすじ[藤子・F・不二雄SF短編]

ある一人の宇宙飛行士が、ロケットの故障によりある星に辿り着きます。

地球から迎えのロケットは来ていますが、遠いので23日後の迎えになります。

宇宙飛行士の青年がたどり着いた星は「イノックス星」という星でした。

イノックス星には文明があり、ミノアという美しい女性と出会います。

しかし、ミノアは地球でいう牛、つまり家畜だったのです。

イノックス星ではウシのような生物が「ズン類」として支配しており、

ヒトのような生物が「ウス」として「ズン類」に飼われています。

ミノアは大祭で大皿に盛り付けられることが決まっていることを

知った青年は彼女を救おうと奔走するも、誰にも訴えは伝わりません。

青年の努力の甲斐なく、ミノアは笑顔で大皿の上に。

青年は迎えにきたロケットの中でステーキを食べたところで物語は終わります。

(出展:作品名:藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>1巻 P50
作者:藤子・F・不二雄 出版社:小学館)

 

【ミノタウロスの皿】 ①価値観を共有できるか

この作品中では青年もイノックス星の方も言葉を交わすことは出来ています。

しかし根本的な「価値観」が異なっているため分かり合えることができません。

青年からすると「牛(のような生物:ズン類)」は家畜です。

ヒトがウシを食べることは問題ありませんが、

ウシがヒトを食べることには理解できませんでした。

イノックス星の方からすれば、「ヒト(のような生物:ウス)」は家畜です。

家畜であるウスと支配者であるズン類は言葉を交わすことが

出来ているうえに価値観も共有できています。

(出展:作品名:藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>1巻 P30
作者:藤子・F・不二雄 出版社:小学館)

 

それどころかイノックス星のズン類は、

青年が地球における「ズン類」だと知ると、

家畜である「ウス」の待遇ではなく、

支配者である「ズン類」として厚遇する申し出をしています。

(出展:作品名:藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>1巻 P30
作者:藤子・F・不二雄 出版社:小学館)

イノックス星の人の方が理解と許容は広いことが伺い知れますね。

 

【ミノタウロスの皿】 ②青年に対して感じる恐怖

反対に青年と価値観を共有しているはずの私たち読者ですが、

どのように感じましたか?

私は青年に対して「恐怖」を感じました。

(出展:作品名:藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>1巻 P37.38
作者:藤子・F・不二雄 出版社:小学館)

青年はイノックス星の方を

「相手の立場でものを考える能力が全く欠けている」

と評していますが、実際は逆のように感じてしまいます。

青年が「イノックス星」での価値観を理解せずに、

「地球」での価値観を押し付けています。

そして理解されないと嘆いています。

これは本当に考えさせられる物語です・・・

 

【ミノタウロスの皿】 ③常識や倫理観とは何か

青年が持っている常識や倫理観は、

イノックス星では全く理解されませんでした。

ただ、この辺りは現実世界でも同じことではないかなと私は考えます。

そしてそれが藤子・F・不二雄先生が主張したかったことではないか?

と私は解釈しました。

常識や倫理観はあくまでその人の中にある話ですよね。

人の数だけ「常識」はありますし、

生まれ育った環境によって「倫理観」も異なっているでしょう。

考え方や行動はその人にしか変えることが出来ません。

それを一方の「常識」をもって強制することはできませんね。

 

【ミノタウロスの皿】 まとめ

私は上記のように「一方的な価値観を押し付けることはいいのだろうか?」

「価値観は違ってもいいのではないか?」

といったメッセージが込められていると感じました。

しかし、この物語から感じるメッセージは人によって異なっていると思います。

是非一度ご覧いただき、自分にとっての「メッセージ」を受け取って頂ければと思います。

他にも考えさせられる話が多く掲載されていました。

まだ1巻しか読んでいませんが、今後全8巻読む予定です。

また紹介したい作品があればご紹介いたします。

 

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